耳に残るのはあの夜の雨の音。リュートの音。
記憶にあるのはあの夜の雨の音。
仕事を終わらせ
早足でanthemへ向かった。
大雨で履いていたレインブーツの重さが
少し歯痒かった。
この待ち合わせの感じでさえ
ごくごくいつものことのようにさえ
感じる。
待っていたのは東京在住の彼女。
ぼんやりと話していた
夢は
あっけなく叶ってしまった。
「いつかanthemで高本一郎さんのリュートを聴きたい。」
肩を並べて
お酒を呑みながら
高本さんの奏でるリュートと
フランス人のジョデル・グラッセさんのプサルテリウムの音色に
ひとしきり酔いしれた後、
"また明日ね"
と別れた。